DIP

益子の、桜がみえる家

“絵画のような桜の庭を望む邸宅で、美しい四季を堪能”

住みたい場所はもちろん、どのような住まいにしたいのか、インテリアに使いたい家具のひとつひとつ、それらに見合う機能的な動線、壁や床の素材に至るまで……新居に対して明確な希望を持っていた畑さま夫妻。

「パリのアパルトマンみたいな住宅を建てたいと考えていたけれど、まったく叶わないんです。ハウスメーカーや工務店でひと通り相談して、好きなものを形にするにはそれじゃダメなんだと途中で気づきました」と最初の問い合わせで真剣に話していたのが、印象的だったとDIP佐山さんは言う。

「畑さま夫妻は自分たちが気に入って選りすぐった品々に囲まれて暮らすことに幸せを感じるお二人です。はっきりしたヴィジョンを持つお客様といえど、全てを叶えることは容易なことではありません。要望に応えながらも、どのように完成まで導いていくのか、さまざまな設計手法からベストなルートを導き出す。それが私たち設計事務所の役割だと思っています。

今回で言うと、心と身体が落ち着くことのできる夫婦の憩いの場をつくること。それが最大のテーマでした。打ち合わせにはじっくりと時間をかけ、外観のプロポーションデザインを約30パターン創り、外壁の素材、色、サッシュの大きさを提案し、内装は床の素材、質感、壁紙の色や手触り、木製建具のデザインとドアノブのメーカー蝶番金物の種類、タイルや塗装の品種、スイッチプレート、コンセントプレート、照明の灯具や配光、水栓のメーカー等も含め約520種のサンプルやカタログを吟味し、都内のショールームとも打ち合わせを重ね、ひとつひとつ丁寧に検討しながらプランニングを進めました」とDIP佐山さん。

住み手の畑さま夫妻が、とにかくリラックスできるような“空間”、つまり光と素材とプロポーションを熟考したプランが求められた。家族が心地よい時間を過ごすために、どのような空間を作り上げるべきか、答えを見つけるためには、さらに深い会話を交わし、細部にいたる要望を引き出さなければならない。最後の最後まで畑さま夫妻の納得する形を模索した結果、完成するまでに約4年という長い歳月をかけて、マイホームはやっと完成した。

リビングダイニングとして、開放的なLDKや和室を設けている1階。特に家族が集うリビングは、ダイナミックな天井とともに開放的な雰囲気に。さらにダイニングテーブルを置かずカウンターにすることで、自然にリビングに溶け込ませ、洗練された印象を演出している。実はこのキッチン、少しキッチン側の床を下げてソファと目線が合うようにしているという。そうすることによって、デザイン性だけでなく、コミュニケーションがとれるスペースとして活躍するのだ。そしてこのリビングには、ソファや暖炉など、さまざまな心地よいシーンが存在。家族がほとんどの時間を過ごすためのくつろぎの空間でもある。

2階は寝室などのプライベートなスペースだ。2階へと続く階段はパリのアパルトマンのエレガントな手すりをデザインしヴィンテージ感のある手すりをつけた。吹き抜け空間には1969年にヴァーナー・パントンがデザインしたVERPANのペンダントライトを設けており、随所に取り入れられた建て主のこだわりの品が空間に彩りを添えていく。

さらにDIP佐山さんは、趣味のバイクを置くためのショーケースのようなガレージを敷地内に造形。ツーリングと共にバイクそのものを愛するご主人の願いを叶えたと同時に、外観に個性を与えている。「エントランス前のガレージで屋根付きならば、作業用のスペースも確保でき、休みの日にメンテナンスもできて一石二鳥。ビルトインガレージだと引きこもり過ぎてしまうが、ここなら愛車を眺めながらゆったりとした贅沢な時間を過ごせる場所として活躍してくれるはずです」。

そして、この住宅を象徴すべき桜と建物の関係を忘れてはならない。「桜の景観はその土地が受け継いできた財産とも言うべき存在。この敷地の大きな魅力である桜の眺めを楽しんでもらえるように、一歩引いてリビングから桜を望む建物配置を考えました」。そう話すように、窓いっぱ いに広がる景観は息をのむ素晴らしさ。1階のリビングダイニングからは、大きなピクチャーウィンドウで桜を大胆に取り込んでいる。

そこに至るまでに大きな苦労があった、とDIP佐山さん。「敷地の東西南北が全て4.0m以上のがけに面しており、一定の高さを超えるがけの場合は、栃木県条例によって制限を設けられます。桜を見せたいけど、普通に設計すると崖条例に抵触してしまう。測量を全て見直し、法規をクリアするのが大変でした」。

しかし、ただ法規をクリアするだけに留まらないのが、DIP佐山さんの真骨頂。「普通に桜が見えるだけでは意味がありません。暖炉の前でくつろげるという心理的安心感が、落ち着きのある空間を生み出すのにひと役買っています。目の前の炎の揺らめきを感じながら、視線を遠くに見やることにより、心地よさが生まれます」。

灯りを抑えた室内からは、庭の桜がよりクリアに移る。その姿はまるで絵画のような美しさがそのままインテリアになったようだ。「この家が完成して以来、お家で過ごす時間を何よりも大切にしています。ソファに座って暖炉の前でウイスキーを飲むのがこの冬いちばんの楽しみでした。春の時期は一面桜色に染まって圧巻ですし、夏の緑は鮮やかで四季の移ろいを感じます」と畑さま夫妻。柔らかな淡い桜の姿が溶け込む風情とともに、こだわりの詰まった暮らしを楽しんでいる。

  • 作品名

    益子の、桜がみえる家

  • 所在地

    栃木県 益子町

  • 家族構成

    ご夫婦、ご長男(4歳)

  • 居住年数

    1年

  • 居住タイプ・構造

    木造2階建て

  • 延床面積・間取り

    120.16u(36.4坪) 5LDK+小屋裏収納

  • 価格

    家づくり相談をいただいた方限定でお教えしております

  • ご趣味

    バイク、インテリア収集