DIP

森へひらく平屋

取材作品

小さな美術館のような造形に暮らしの快適さを

奥さま曰く、「DIP佐山さんの提案に私たちがなかなか完成形をイメージできず、スムーズに進まない時もありましたが、最後までこだわって本当に良かったです」と。

閑静な住宅街で、白と黒が重なり合った細長い外観がひときわ目を引く梅野邸。前面道路から見る外観はゆったりと横に広がる長方形のフォルムが特徴的だ。玄関のあるアプローチには、宮城県丸森町の大蔵山でしか採れない、イサム・ノグチの作品にも使われた伊達冠石をオブジェに。奥に続くソリド壁とのコントラストがバランスの良さを感じさせ、外観はまるでモダンな美術館を思わせる、生活感を感じさせない仕上がりになっている。

「梅野さんはザ・リッツ・カールトンが好きとのことだったので、直島にある地中美術館や安藤忠雄建築などいろいろ好みを提案したんですが、やはりそれだけではイメージしづらい部分があったようです。そこで思いきって、美術館を回りましょう!と提案して一緒に巡ったんです。宇都宮美術館や那珂川町馬頭広重美術館、フォレスト益子など、全体のロケーションの中で現実に使われているものを見せてイメージを膨らませてもらいました。今考えるとお互いよくやったなぁと思いますね」とDIP佐山さんは当時を振り返る。

その甲斐あって梅野さんのイメージはどんどん固まっていき、梅野さんからの要望であった「外観をステキにしたい」をもとに、一般的な住宅の概念を取り払い、余計な装飾を抑え、外観はもちろん内観もどこを切り取っても美しいエレガントな住まいが完成した。

玄関を開けると屋内と屋外を緩やかに繋げる一本道のようなスペースを抜けリビングへ。そこには外部からの視線を感じることのない、光と緑のあるシンプルな空間が広がっている。

約27畳のリビングスペースはダイナミックな開口で南に大きく開かれ、そこから見渡す広がりと開放感は、贅沢なくつろぎの時間そのもの。一部を勾配天井にしている効果もあって、体感的な広がりはそれ以上にも感じさせる。青い空や自然の森が何とも心地のいい気分にさせてくれる。リビング越しに景色を眺めながら落ち着いてくつろげるキッチンとソファは、ご夫婦のお気に入り場所だという。

「敷地を一緒に見たときに森への視界が広がってこの空間は取り入れなければならないなと思いました。ただこの森には針葉樹が多く植えられています。そのため冬になってもほとんど落葉がなく薄暗いのがネックでした。森を見ながら暗さを感じさせず、光が美しく入る空間に仕上げることが課題でした」。

屋外を見せる窓は開放的な空間を優先させているが、居心地につながる温熱環境への対策にも配慮していると続けるDIP佐山さん。

「開口部は熱損失が大きいのでペアガラスを標準とし、家全体の断熱性能を上げています。そうすることで、設備に頼りすぎずに夏涼しく冬暖かい家をつくることを心がけました」。

陽が落ちれば森そのものが浮かび上がるような風景が広がってくる。間接照明の柔らかな光のなかで、ギャラリーに飾られた絵画のようにも見えてくるから不思議だ。窓越しに見える森に四季を通じて移ろうリゾートにいる気分にさせてくれるだろう。

着付けをやっている奥さまのために作ったという和室も美術館ライクな梅野邸の構成要素として重要な要素だ。抽象的な造形の引き戸はオーダー建具であり、木の素材感や美しさ、何よりも和室の良さをシンプルに引き立てている。そして畳縁に目を向けると柄が少し変わっていることに気づく。これは名前に由来のある梅と松を合わせ柄に仕立ててもらったものだという。

このように細部に至るまでこだわり抜かれた上質が息づいているせいか、所々に芸術作品さながら洗練を極めた作り込みがあるのも梅野邸のエレガントなつくりを際立たせる要因となっている。

さらには長く暮らしていくのに大切なお風呂のインテリアや洗面所にもこだわりを。シンプルで生活感のない洗面所は、大きな洗面台に一面の鏡、上品な光りを放つ照明、そのすべてがホテルのような雰囲気を演出。大きく窓を取り窓の外へと一体化したような浴室は、奥行と広がりの感じられる空間になっている。風景がより爽快で心地のいいものに感じられることだろう。

毎日を過ごすお家で、梅野さんが出会ったかつてない美しさと機能性。そこには、隅々にまで行き届いた建築家と施主の美意識を感じることができるはずだ。こうして梅野邸はロケーションを活かした眺めと心地良さを満喫できる快適で特別な住まいになっているのである。

  • 作品名

    森へひらく平屋

  • 所在地

    栃木県宇都宮市

  • 家族構成

    ご夫婦

  • 居住年数

    半年

  • 延床面積・間取り

    123.38u(37.35坪) 3LDK

  • 居住タイプ・構造

    木造平屋建て

  • 価格

    家づくり相談をいただいた方限定でお教えしております

  • ご趣味

    車・美術館巡り